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009 明日香さん襲来

last update Huling Na-update: 2025-05-23 17:00:36

「毎度―っ、不知火〈しらぬい〉でーす」

「いらっしゃい明日香さん。いつもありがとうございます」

「おおっ、愛しのダーリン。今日もいい男だね」

 そう言って、肩に乗せていた米袋を下ろすと、明日香と呼ばれた女が直希に抱き着いた。

「だから明日香さん、その呼び方はやめてほしいといつも。スキンシップも激しいというか」

「私とダーリンの仲じゃない。私はダーリンのこと、いつでも受け入れる準備出来てるんだからね。おーい、みぞれ、しずく。パパに挨拶しなよー」

 明日香の声に、3歳になる双子の姉妹、みぞれとしずくが走って中に入ってきた。

「パパー、ただいまー」

「パパー、ただいまー」

 そう言って二人が、直希の足にしがみつく。

「こんにちは、みぞれちゃんしずくちゃん。でもね、俺は君たちのパパじゃないんだからね」

 二人を抱き上げ、直希が笑顔で頬にキスする。

「明日香さんも、こんなちっこい子供に嘘、教えないでくださいよ」

「いいじゃんいいじゃん。ダーリンがあたしのプロポーズ受けてくれたら、この子たちの本当のパパになるんだから。今からちゃんと、練習しとかないと」

「何の練習ですか……ああ、あおいちゃん、お帰り。どう? ちゃんといる物、買えた?」

「……あおい?」

 明日香が振り返る。

「すいません、住ませてもらえるだけでもありがたいのに、こんなにたくさんの物、買っていただいて」

「いいっていいって。就職祝いなんだから」

「私、これから一生懸命働きますです。そしてこのご恩、きっとお返ししますです……あ、お客様ですか?」

「うん、紹介しておくね。不知火明日香さん。近くのスーパーの配達員さんなんだ」

「そうなんですね。不知火明日香さん、よろしくお願いしますです。それであの……このお子さんたちは」

「明日香さんの子供さんで、みぞれちゃんとしずくちゃん。双

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